ろくちゃんが始めて珈琲屋吹野にやって来たのは、去年の今頃?だっただろうか。
お母さんに連れられて、恥ずかしそうに入って来たのは、高校三年生の可愛い女の子でした。
ちゃんとお話が出来る子で、色々な事を話してくれて、すぐに常連さんになってくれました。
お気に入りは、「カフェ ラ テ」と「キャラメルバナナトースト」でした。
そして、こういうお店で「いつもの!!と注文してみたいよ~」と言っていた少女は、それから頻繁にそのお気に入りを食べに来てくれるようになり、すぐにそれを実現させました。
「こんにちわ~」と入って来て、「いつものを!!」と言えば、「カフェ ラ テ」と「キャラメルバナナトースト」が目の前に登場するのです。少し大人になったような気がしたみたいに嬉しそうだったな~と、その笑顔を思い出します。
高校三年生の秋に、こんなにのんびりしているのは何故?とお思いでしょう。
実は、彼女はもう進路が決まっていたのです。
彼女は、もう自分の「やりたい事」をすでに見つけていたのです。
そして、そのやりたい事を学ぶ為の学校に入学が決まっていたのです。
だから、まわりの友達が、受験受験で大童な時、彼女はのんびりと吹野にやって来ては、お気に入りのセットに舌鼓を打ちながら、将来の夢を語ってくれました。
18歳で、自分がやりたいことを見つけられるという事は、素晴らしいことだと思います。
自分自身のことを振り返ってみても、まだ18歳の時は、具体的なものは見えていなかった。
そして今ほど、多種の職業がなく、選択の範囲が限られていたような気がします。
ろくちゃんが選んだ職業も、「へえ~!そんな仕事があるんだね~」と、おばさん達には馴染みの無い仕事でした。
でも、とっても面白そうで、少なくとも私個人的には、ワクワクするような仕事です。
この春、ろくちゃんはその夢に向かって進むべく、東京へと旅立って行きました。
女の子をひとり都会に出した母の心配をよそに、めまぐるしい毎日の中で、夢を掴む為に歩み続けています。
時々、帰省する時は、必ず吹野に「いつもの!」を食べに来てくれます。
先日もお母さんにメールがあったそうです。
「吹野のキヤラメルバナナトーストが、凄~く食べたいんだけど!宅急便で送って!!」と・・・
嬉しいですね~!
でも、残念ながら送る事は出来ないので、この次帰って来る時までお預けです。ごめんね!!
夏に帰って来た時も、とても洗練されて綺麗になっていました。
この次、更に成長した「ろくちゃん」に会うのが愉しみです。
夢に向かって、ガンバレろくちゃん!!
このところ暗いニュースが多い中で、久々に明るいニュースが飛び込んできた。
ノーベル物理学賞をなんと日本人が3名も受賞されたという。
カーラジオで、その第一報を伝えるアナウンサーが、
「どんな研究をなさっていたのか、まだ資料が入ってきていないので分かりませんが、たぶん、手元に資料が来て読んでも、恐らくさっぱり解からないと思います!!」と言われ、私も同感!!と、笑ってしまいました。
その後の報道によると、素粒子の研究をなさっている方々で、ビックバンの解明などで、宇宙誕生の謎を解き明かす!!というものだそうです。凄い事を研究なさっている方がいらっしゃるものです。
是非、「宇宙誕生の謎」のお話が聴きたいですね!
ワクワクしますね!!
そして思うのです。
珈琲という飲み物を発見、発明した人も、ノーベル賞ものだと!!
コーヒービーンズを焙煎するといい香りがする、ということ。
それにお湯を注ぎ、抽出すると、美味しい飲み物が出来る、ということ。
この素晴らしい発見、発明があったお蔭で、今私たちは毎日美味しい珈琲が戴けて、
そして私は珈琲屋を営んでいられる。
ふと、そんなことを思ってしましました。
吹野のすぐ近くに、「えるもーる商店街」というのがある。
高島屋とやよいデパートを中心とした商店で運営されている。
そこが毎年この季節に「えるもーる祭」を開催される。
その中で、恒例となっているのが、「土佐の鰹のたたき」の実演販売!!
この鰹のたたきが、めちゃめちゃ旨い!!のです。
黒潮の狩人たちによって、一本一本釣り上げられ、氷と海水のブレント水で保存され、大事に港まで運ばれるという。
鮮度に拘ったその鰹を更に美味しくするのが、「焼き方」である。
一年分蓄えられているという「わら」で一気に焼き上げる。
焼き加減は、表面を3~4ミリ程度炙るのだそうです。
すると、いい香りがついた、美味しい土佐の高知本場の鰹のたたきが出来上がるのです。
私が口にするのは今年で3回目位になるでしょうか。
毎年、この秋祭りが楽しみで、近づくと「鰹」「鰹」とウキウキします!!
昨日、その美味しい鰹のたたき、戴きました!!
やっぱり美味しかった~!!!
これを食べたら、もう市販のものが食べられなくなります。
なので一年に一度、この時しか鰹のたたきは食べません!!
いつか高知まで出掛けて、本場で戴いてみたいものです。
なかなか高知まで出掛けられない!という米子近郊の方、来年は是非この鰹を味わってみて下さい。
きっと、虜になりますよ!!
今回は、全く珈琲屋吹野に関係のない話でしたが、これからも時々、私のお薦めの「美味しいもの」を紹介していこうと思います。
あ~ 食欲の秋!!・・・辛い季節です・・・・・
8月の中旬だったと思います。一人の青年が入って来ました。
リュックを背負い、カメラを手にしていたので、すぐに旅人と判ります。
「こんにちわ!!」と人懐っこい笑顔で、店内を見回しながら歩みを進めると、カウンターの中程で立ち止まると、そこに飾られている写真を、嬉しそうに見ています。
そこには、丁度今朝入れ替えた、島根県浜田市の水族館「アクアス」で私が昨年撮った写真がありました。
青年は「これ!アクアスの海月(クラゲ)ですよね~!!」と言いながら嬉しそうに自分のカメラを起動させています。
私も彼が言い当てた事に驚き「そうだけど、どうして?・・・」と眼が点!の私に「ほら~!!」
と彼が差し出したデジカメを見ると、何と!!!私の写真とほぼ同じショットの海月が写っているのです!!
こんなサブライズ、ありますか?!
その海月は青いゴムボールのような形をしていて、水槽の中でフワフワ泳ぐ姿がとても癒されるもので、思わずシャッターを切った一枚でした。
それも、何と、今朝入れ替えたばかり!です。
そこに彼が現れ、「僕も昨日アクアスへ行って、撮って来たんですよ!!」と驚きを隠せないでいました。
もちろんそれからはなしが弾んだのは、言うまでもありません。
東京から、まず山口県に入り、萩、津和野、アクアス(浜田)出雲へと旅して来たと話してくれました。
彼が出雲入りした日は、出雲大社が六十年に一度の遷宮で、普段開かないところを一般公開している期間でした。
それも彼の旅の計画に入っていたのだろうと思い、「良かったね~!貴重なものが見られて!!」と言うと、「実は僕それを知らなかったんです!!」というのです。
知らずに、出雲大社近くのお蕎麦屋さんで入った時にそれを教えられ、それは是非見ておきたいと思い、見てきました!!」
というものの、そう簡単な話ではありません。
何故かと言うと、そこへは正装でなければ入れません。当店に来た時も、短パンにTシャツでした。
旅行者の彼が、まさかリュックの中にスーツを入れているなんてことは有り得ません。
「どうしたの?!」と訊くと、その蕎麦屋さんが、近くにスーツをレンタルしてくれるところがあるからと教えて下さり、無事参拝することが出来たと言うのです。
なんと、ツイてる、ラッキーボーイだろう!!と彼の運の強さを感じました。
この旅が、きっと彼の人生にとって価値あるものになったのではないでしょうか。
ある晴れた日、店の前に車が止まり、運転席から降りた男性が、助手席のドアを開け、そこに座っている老女を背負うと、吹野のドアへと歩み始めました。
私は慌ててドアへと駆け寄り、内側から扉を開き「いらっしゃいませ!どうぞ~」とご案内し、入り口近くの席を勧めました。
その男性は「ありがとうございます!」と私に礼を言いながら、慣れた様子で、上手に老女を椅子に降ろし、「どうしてもここの珈琲が飲みたいというものですから、連れて来ました~」と優しい笑顔で仰り、老女の希望されたモカを「美味しい~」と言いながら飲んで下さいました。
老女は、もちろんその男性のお母さんでした。
数ヶ月前にお家で転倒され、入院リハビリの後、やっと退院なさったばかりだということでした。
当店の珈琲を気に入って下さり、それからも時々訪れて下さるようになりました。
いつも、お天気の良い日で、お母さんの趣味の写真を撮りに、大山や花回廊などへ行かれた帰りに立ち寄って下さっているようでした。
なんと親孝行な息子さんだろう、と、いつも感心するばかりでした。
車椅子で、という風景はよく見かけますが、背負うという姿はこの頃あまり見かけませんよね。
何だか、車椅子より心が通っているような気がするんですよね。(車椅子には申し訳ないけど!)
でも、背負う人は大変です。体力が相当必要です。
それに、車の乗り降りの時も、一度もお母さんの頭を車にぶつけられたことが無いのです。
私が感心すると「これも慣れ ですから!!」と、笑って仰る。
ある日、お母さんが、こんな不自由な体になってからも、息子があちこち旅行に連れて行ってくれる、と嬉しそうに話して下さり、この間は東京にも行きました。
愉しかったです!と、笑顔。
すると、息子さんが、こっそり私に「もう国内はいいから、今度は外国に行きたい!なんて言うんですよ~!
ひとの苦労も知らないで~」と汗を拭きながら苦笑い(笑)
それは、どれほど大変な旅かは、想像がつきます。
なかなか出来る事ではありません。
でも、この息子さんの優しさには、それまでのお母さんの息子さんに注がれた愛があるからなのではないかと、私は思いました。
 たらちねの母を 背負いて そのあまり 軽きに泣きて 三歩あゆまず
そんな句が、ふと浮かびます。
このところ、姿をお見かけしていません。お元気に旅をしていらっしゃるでしょうか。