縁の糸

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♪ 袖擦り合うも多少の縁


 古(いにしえ)からの伝え通り


 この世で出会う 人とはすべて


 見えぬ糸で 繋がっている


 天が描いた シナリオに沿い


 あなたと私 知り合うの


 時に愛して 時には泣いて


 やがて かたい絆へと・・・


 どんなに細い 縁(えにし)の糸も


     物語 運んで来る  ♪♪♪

 

この秋から始まったNHK朝の連続ドラマで、松江を舞台にした「だんだん」の主題歌の歌詞です。


神話の国、出雲で生まれ育った 竹内まりやさんだからこその歌詞ではないかと思います。


私も、この世で出会う すべての人とは、見えない糸で繋がっている と、思っていて、もっと言えば、前世で関わりのあった人達 だと思っているんです。


もちろん「前世」はある!と思っている派 です。


珈琲屋吹野という「場」を借りて、出会えた多くの方がいらっしゃいます。


その中で、深く関わっていく方があり、そういう方々との「縁」をいつも感じています。
この人と出会えて心から良かった、と思える人もありますが、中には、なぜこの人と??という方もあります。


それは、「きっとこの方には、前世でとてもお世話になったのだろう。だから今生で、そのご恩返しをさせて貰うんだ」と、勝手にそんなふうに思って、お付き合いさせて戴いています。


そんなふうに考えてみると、人との出会いや、関わりが、とても興味深いものになっていきます。


だってそうでしょう!!


普通に暮らしていたら、出会いそうも無い、何の接点も無い人と出会い、心を許しあえる存在へと導かれていくのですよ!!


幸せな事に、吹野へは、全国から、旅の情報誌や、このようなネットを見て、訪ねて来て下さる方がいらっしゃいます。


遠くは、北海道の旭川からも、二度もご来訪戴きました。


この旭川の森田さんという方には、「僕は、喫茶店はその地の文化を表すものだと思っています。
米子に吹野がある。米子の文化を担っていると思って頑張って下さい!!」
と、こんな光栄な言葉を戴きました。


いつも、この言葉を胸に、今日も笑顔で、皆様をお迎えし、また、新しい出会いに心躍らせています。

 

  

 

日日是好日

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昼下がり、店の前に自転車が止まる。


降りた青年が、珈琲屋吹野の扉を押し入って来る。


「いらっしゃいませ~」と言いながら、ん~!見覚えのあるお顔~?!と内心思う。


注文戴いたアイスコーヒーをお持ちすると、「10年振りに来ました~!」と恥ずかしそうに微笑む。


「ですよね~!見覚えあるお顔だな~と思ってました!!」と言うと、「あ~憶えていて下さいましたか~!!」と頭を掻く。


「学生の頃よく来てたんですけど、仕事が遠くになったのでずっと来れなかったんですけど、今度転勤でこっちになったもんで、ちょっと仕事サボって来ちゃいました!!」と。


それから静かにコーヒーを口へ運びながら、感慨深そうに煙草に火をつけ、椅子に体を委ね目を閉じ、久し振りの吹野を愉しんで下さっているようでした。


最後のひと口を飲み干すと、席を立ちレジに。
「久し振りの珈琲のお味は如何でしたか?!10年前と変わっていませんでしたでしょうか?!」と、おどけてお尋ねすると「変わらず美味しかったっす!祈願が叶いました!!」と。          

そして、「10年前、いっつもここで勉強させてもらってました。お蔭で資格が取れて、今の仕事に就けました」なんて嬉しい事を言ってくれました。


「そうですか~!お役に立ててよかったです!!」


誰かの人生の中で、ほんの少しでもお役に立てるということは、何より幸せです。


こういう事があるから、私も頑張れるのです。


かつては、学生さん達がここで勉強している姿をよく見かけたものでした。


「これから、また時々寄らせてもらいます!!」と言い残し、自転車は秋風の中を走り去って行きました。


10年の月日が、彼を大人にし、私の皺を増やしました!!

 


 

「ネコヤナギ」のお話

 

 

昨日の閉店前最後のお客様は・・・・・


「こんにちわ~!」っと元気に入って来たコーチャン でした。


まだベビーカーに乗って「バブバブ~」と言っていたコーチャンが、今はもう4歳です!!


今日は、お母さんとぬいぐるみ人形劇「天のたまご」を観て来た帰りだということでした。


「どんなお話か教えてあげようか~」とコーチャンが笑顔で言います。


「うん、教えて~」と私が言うと、「えっとね~え~とね~」と一生懸命に言葉を探します。


私は、辛抱強く待ちます。

子供が話をしようとする気持ちを大切にしたいからです。


おとなになってから、大切な事は、お勉強がデキる、ということではなく、人とコミュニケーションがとれることと、人の痛みがわかる優しい心をもっていることだと、私は思っています。


だから、珈琲屋吹野に来る子供たちの話は、どんな話でも、耳を傾けることにしています。


「あのね~アメンボウがねぇ~・・・・・」とようやく話が始まります。


するとお母さんが「アメンボウじゃなくて、アコヤ貝でしょ~」と。
そこから、たまごが生まれて、サメやクジラをやっつけて、戦う!のだと、コーチャンは、必死に話してくれます。と、また「ネコヤナギがね~」と新しい名前が出てきます。


「???ネコヤナギ~?? アコヤ貝じゃなかったっけ~!!」と私が言うと、「あっ、そうそう、アコヤ貝がねぇ~」と笑いながら続きが始まります。


アコヤガイとネコヤナギ!!言われてみれば、よく似てますよね~!!


可笑しくて噴き出してしまいました。でもコーチャンは愉しかった人形劇のことを伝えたくて一生懸命なのです。


本当に可愛いんです!!


そして、話の途中、急に「お母さん、抱っこして!!」とお母さんの膝にちょこんと座ります。


それも、ほんの1分足らずです。


もうそれで満足して、お話に夢中になります。


それには、訳がありました。


普段は、今年生まれた弟に、その膝を奪われているのだそうです。


だから、今がチャンス!!と気付き、ちょっとだけ甘えてみたのです。


4歳だって、まだお母さんの膝は恋しいのです!!


男の子なのに、この子はホントおしゃべりで~!!とお母さんは困った顔をしましたが、私は、男の子だろうと、女の子だろうと、誰とでもお話できるということは素晴らしい事だから、そんなこと言わないで、お話聴いてあげてね!!と、お母さんにお願いしました。


この次は、ゴレンジャーの靴を見せてくれるのだそうです。


愉しみですね~!!


孫の成長を見守るおばあちゃんの気分!!でした。

 

 

誕生日おめでとう!!

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昨夜は友人の娘の24歳を祝う会で、久し振りに米子の夜の街へ出掛けた。


友人はもう30年以上の付き合いになるだろうか。


だから、その娘も当然のことながら、生まれた時から知っている。

その子が24歳になるのだから、自分の重ねてきた年月の長さを改めて実感したりする。


10月20日に誕生日を迎えるMちゃんは、理学療法士の資格を取り、いつの間にか私たちと対等に話が出来る大人になっていた。

もちろん、お酒だって呑める。


まさか、あの幼子と、一緒に酒を酌み交わす日が来ようとは・・・・・
今や立派な社会人。

体重も気になる乙女になり、かなりの努力の結果ダイエットに成功した!!などという話もしてくれた。


ひとりっ子なので、両親の溺愛の中で育てられたが、それほど我儘にもならず、しっかりした女性に成長している。


施設に入居している母方のおばあちゃんの面倒もよくみている。


遊びたい盛りに、なかなかできる事ではない。


先日も家族でおばあちゃんを連れて、珈琲屋吹野に来てくれた。


私も数年ぶりにお会いするおばあちゃんでしたが、家族に囲まれ、とても幸せそうな笑顔を見せて下さいました。


お天気の良い日で、花回廊へ行った帰りとのことで、花に囲まれた仲睦まじい写真をデジカメの画像で見せてくれました。


もうそろそろ、素敵な彼が・・・と思う娘と、まだまだ手放したくない両親とのバトルが愉しみである!!


 

営業マンは名脇役!

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吹野には時々飛び込みのお客様があります。


昨年の3月、まだ少し風が冷たい日でした。


スーツに黒いカバンという、如何にも営業マンという出で立ちの若者が入ってきました。


「こんにちわ~」と「珈琲をお願いします!」と言うが早いか「お手洗いお借りします!」と黒いカバンを置くと、一目散にトイレへ駆け込みました。


ずっと我慢して来たのかな~なんて気の毒に思いながら珈琲を淹れていると、若者はスッキリ爽やかに出て来て、私の正面のカウンター席に腰を降ろしました。


「素敵なお店ですね~!」と店内を見回しながら言いました。セールストークのお世辞かもしれないけど、私は心から思って言ってくれたのだと受け取り「ありがとう!」とお礼を言いました。


それから彼が名刺を差し出したのですが、よく分からない名刺なので、何の仕事か尋ねると、話してくれたお仕事はこうでした。


バスに乗った事がある方ならご存知かと思いますが、それぞれのバス停に近づくと「次は○○前です」などのアナウンスが流れます。


その時、「○○へ行かれる方は、ここで降りると便利です」というような案内が付け加えられる事があります。


私は彼からその話を聞くまで、そのアナウンスは、バスの親切なサービスだと思っていたのですが、実は、有料の広告宣伝であり、彼はそのスポンサーを獲得する為に歩いているのだというのです。


「へ~え!」と感心する私。


もしかして、当店にもその営業をする為に来たのかと思いましたが、幸か不幸か、ここはバスの路線沿線ではなく、対象外でした!!


それから話が弾み、彼が今日契約してもらったところのアナウンスを作ったものを、これでどうか?とアドバイスを求められるままに、色々意見を言わせてもらったりして、愉しい会話が出来ました。


一週間という期間限定で広島から来ていると言い、また次の日もやって来た。
どうやら吹野を気に入ってくれたらしい。


そして私が、どうしてこの仕事を選んだのかと質問したからだったと思うのですが、この仕事に就く前は、役者を目指し頑張っていた!という話になりました。
これまた「へ~え!」と感心する私。


トイレもお風呂もない安アパートで、何人かの仲間たちと頑張ってみたけど、どうにも芽が出ず、諦めて就職したのだと言う。両親の心配もあったとのこと。


一緒に頑張っていた仲間を聞くと、私も知っているお笑い芸人の名前が何人かあがった。


ちょこっと、その他大勢として出た作品があるかと問うと、あります!と言う。
「何?!」と訊ねると、「映画 海猿Ⅰです!!」と言うのです。


「凄いじゃない!!」と、はしゃぐ私に、ほんのちょっとで、知らなければ見過ごしてしまうようなワンシーンですから!!」と首を竦める若者。


彼が説明してくれたそのシーンに気をつけながら、「必ず君を見つけるからね!!」と約束し、その週末の夕方でした。


「今から広島に帰ります。色々ありがとうございました。今度は仕事じゃなく、また米子に来ます!!」と深々と頭を下げ、若者は立ち去って行きました。


その後、もちろん私は「海猿Ⅰ」を眼を皿のようにして、彼を見つけるべく、正座して、瞬きもせぬよう拝見致しました。


彼は謙遜していました。
しっかりと主役の伊藤英明くんとの絡みもあり、ほんの少しのセリフもありました。


ギョロっとした眼が特徴だったSくん、名演技をしていたと私は思いました。


画面に向かい、Sくんの名演技に拍手を贈りました!!


今も何処かの街で、元気に歩いているでしょうか。


また、いつか、会いたいですね!!