ミッチー

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その二十歳代と思われる女性がひとりで入って来た瞬間
「いらっしゃいませ」と声をかけながらも
私の中では何故か4~5歳のあどけない少女の顔とその女性の顔が
重なって見えていた。

その顔が一瞬にして遠い昔の記憶へと私を導き
この娘はミッチャン?!???・・・・・と思っているところへ
その娘を追いかけるように入って来た女性が「ミッチー」とその娘を呼んだ。

そのひと声で私はやっぱり!!と確信した。

何故なら「ミッチー」と呼んだその女性は、私の記憶の中のミッチャンの
お母さんだったから!!

「あのミッチャンだよね!!」とお母さんに語り掛けると
笑顔で「そうです」と応えるお母さんとニッ!!と笑うミッチャン・・・

その笑顔は私の記憶の中のミッチャンの笑顔とまったく同じだった。

これだけ顔が変わらない娘はいないと断言できる!!(笑)

顔だけそのままで5歳から大人になったとしか言いようのない娘が
目の前にいることが思えない!!

記憶は20年前へと時空を越えた。

当時、境港から毎日のように珈琲を飲みに来て下さる男性がいた。
その男性の孫がミッチャンだった。

「わたしのことはミッチーと呼んで!!」と澄まして言う
ちょっとおしゃまな女の子だった。

愛くるしいその笑顔は大人たちをメロメロにした。
もちろん私もその中のひとりで、いつも思いがけない言葉に
驚かされたり笑わせられたりの日々だった。

その幼子が今目の前に素敵なレディーになって現れた!!

再会の喜びと驚きを感じつつ、あれからの月日の長さを改めて感じた。

「ここのこと憶えてる?」と訊ねると「少しだけ・・・」とミッチャン

そうだ・・・ミッチャンはたこ焼きが大好きで、吹野に来る途中の店で
おじいちゃんが買ってくれるたこ焼きを持って来ては美味しそうに
青のりをいっぱい口の周りにつけながら食べていたっけ・・・(笑)

「あの頃とちっとも変らないね!! 5歳の頃は凄く可愛かったし
 今は凄く綺麗だよ!!」と感じたままを口にすると
子供の頃に見せたのと同じ嬉しそうにはにかむ笑顔が弾けた。

その表情も何もかも昔のままで、この娘は倖せに育ったんだろうと
この娘を取り巻くすべての大人たちに感謝した。

今は東京に居て、お盆で帰省しているとのこと。
お母さんは久しぶりの娘とのひと時を過ごすのに
この場所を選んでくれたのがとても嬉しかった。


吹野の長い長い歴史を感じた日・・・でした。