「まいにちまいにち」

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私たちは、日々の生活の中で
毎日毎日同じことを繰り返している・・・

そんなことを ふと 思うことがありませんか?!

今年1月に開催した『書で遊ぼ!!』展に
ひらがなで「まいにちまいにち」と書かれた作品がありました。

それは丁度私の目の前に飾られていたこともあり
その開催期間中、私はその文字を「まいにちまいにち」眺めていました。

それが今もずっと目に浮かぶのです・・・

「まいにちまいにち」は、横長の半紙左上から まい と、
縦に書かれた後徐々に右へ横書きに変換していました。

にち から続く文字は少し間隔が狭まり重なって
読みづらいところもあり、
何と書いてあるのか読めず聞く人も多かった作品でした。

「まいにちまいにち」ご飯を作る

「まいにちまいにち」洗濯をする

「まいにちまいにち」掃除をする

「まいにちまいにち」仕事に行く

「まいにちまいにち」学校に通う

「まいにちまいにち」介護をする

私たちの日常の中で繰り返される「まいにち」はまだまだ沢山あります。

この文字を書いた方は私と同年代の男性です。
この方にとっての「まいにち」は「リハビリ」だったのではないでしょうか
「まいにちまいにち」は口癖だったそうです。

まだ若かりし働き盛りの時、仕事現場の事故で
ある日突然、体の自由を奪われてしまわれたのでした。

それからの何十年を支え続けて来られたのが奥様でした。

奥様は展示会の開催中殆ど毎日のようにいらしていました。
その時話して下さったことを、ここに綴っています。

とても小柄なその奥様の、どこにそんな底力があるのかと、
驚きながらお話を伺いましたが、
3人の子供を育てながら懸命にご主人の介護を続けられ、
そして子供が巣立った後、ご主人を車椅子に乗せ車を運転し
日本一周の旅に出たと仰るのです!!

それはまだご主人が事故に合われる前の夫婦の約束だったそうです。
「定年退職したら二人で日本を一周しようね!!」と・・・

その約束をずっと忘れないでいた奥様は、迷わずそれを決行されたのです。

それはそれは大変な旅だったと思います。
でも奥様は大変だったとは、ひと言も仰いませんでした。

ただ行く先々の観光施設のすべてに車椅子で入れるというわけではなく
一番設備が整っているのが「美術館」だったそうです。

「お蔭で全国の美術館を巡ることが出来ました」と笑いながら
その美術館巡りが今役に立っている、と仰るのはご主人の「書」の
表装を全部奥様が担当していらっしゃるからです。

「まいにちまいにち」には、電車の切り抜きが施されていました。
電車も「まいにちまいにち」走っている・・・という発想からだとか(笑)

「ビートルズがすきだぞ」 には雑誌の写真をコピーしたカラフルな
その文字にぴったりの配色が施されており、「竹」も「たいよう」も
それぞれに、その文字を引き立たせる表装が施されていました。

事故直後、もうご主人の意識は戻らないかもしれない・・・
とお医者様から告げられたと伺いました。
が、ここまで快復され、筆を持つことが出来るようになられたのは
偏に奥様の献身的な介護と祈り があったからなのではないだろうか・・・

私も「まいにちまいにち」珈琲を淹れ、ケーキを作り
掃除をして花を飾り、「まいにちまいにち」を繰り返している、
だからあの「まいにちまいにち」の文字を日々思い浮かべるのではないだろうか

自分を励ますために(笑)・・・

そして今日も心の中で呟く・・・「まいにちまいにち」と・・・

「まいにちまいにち」ただひたすら 皆様のお越しをお待ちしています。