「中天の星」

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北の空に全天でただひとつ、決して動かぬ星があります。

天の星はすべて一夜ごとに夜空を一巡りします。
夕刻東の地平から昇った星は、明け方西の地平に沈む。

季節により、星の昇る位置も時刻も変わってゆく。
その中にあってただひとつ動かぬ星がある。

「北辰」と呼ばれる星です。

なぜ動かぬか
それはこの星が全天の中心にあって、すべてがそのまわりを巡っているからです。

古来、海の民は、この星を方角の目印として航海をしてきました。

この世の在りと在るものは見えざる力に導かれ、
この世をあまねく覆う巨大な因果のふところの中で、互いに因となり果となって
からまりあい、生成し運動し消滅していく。

そのすべてを司る原理を"太一"と言い、太一が天に姿を現したのが太一星
すなわち北辰です。

北辰に連なる星を「妙見」と言い、妙見は仏教では菩薩の姿をとって現れますが、
実はすべてを見るものの意味であって、つまりこの世を統べる原理"太一"のことです。

天の中心にあって動かぬこの星のすぐそばを、二つの星宿が巡っています。
それぞれ七つの星から成る星宿で、大小二つの柄杓の形に並んでいます。

大きい方の柄杓を北斗と呼びます。

柄杓はまた、大小二頭の熊の尾とも見立てられ、二頭の熊は互いに背を向ける形で、
互いに互いの後を追うように太一星のまわりを巡っています。

ここには、この世に生を受け生き死んでゆくわれわれの姿が現れているのです。
我々もまた、この世を司る大いなる「ことわり」に導かれ、もてあそばれ、
また救われながら生きては死に、死んでは生まれてくる。


五角形から三角の角が五つ突き出す形、五芒星形     タオ

ひときわ輝く七つの星が柄杓の形に並んだ"妙見"
大熊 柄杓は熊の尾の形
ここは熊野 紀州熊野 天の動きを地上に映す場所
この地にひそむ見えざる力がいま動き出してきている。
天の中心を二頭の熊が巡る。
五芒星のまわりを巡っている。
赤 白 黒の三つの色が三つ巴を成して巡り、常世に治まり、
田は豊かで民が笑顔とともに暮らし黄色のがそれを包み込み国を導く。
これがキの国 クマノは中天の星


これは、谷村新司さんが2008年12月に待望の書き下ろし文芸作品
として書かれた「昴」の七つの物語の中のひとつ「中天の星」
から抜粋させて戴いたものです。

家族ドラマ、時代劇、ファンタジーそして恋愛物語
異なる時代と世界観が重なり合い大きな感動のうねりを呼ぶ。
谷村文学の誕生!   

と帯にありますが、大袈裟ではなくまさにその通りで、
谷村さんには音楽以外にもこんな才がお有りになったのかと
正直驚き、感動し「凄い!!」と心の中で連発しながら読破しました。

本というのは雑学の宝庫だと思っていますが、この本からも多くを学びました。
専門書を開けば、難しすぎて眠くなってしまうかもしれない小難しい話も、
物語にしてしまえば、なんと解かり易く親しみ易くなるものでしょう(^^)

私のお気に入りの一冊がまた増えました~(^^)v